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雑詠(2018年12月号)

夏蝶のごとく翔けたし生きたしよ     望月公美子
我楽多と言う字はためく夏の市
秋日濃し壁一面の世界地図
板の間を隈なく拭きて涼しかり

平成の最後の八月十五日         柳沢木菟
風邪抜けてけふ猫島に猫とゐる      藤永貴之
奉納の舞にやせゆく花氷         山内繭彦
噴水の飛沫を浴びる側へ行く       磯田知己

課題句(2018年11月号)

「山茶花」       田中温子選 

余生なほ山茶花垣の内にかな       伊藤八千代
山茶花の咲きつぎて散る母の忌に
山茶花や水音清き肥後城下

山茶花掃くや何も手につかぬ日に     梅岡礼子
公園の山茶花日和子と犬と        町田 良
山茶花に無き咲き始め咲き終り      辻 梓渕
山茶花に谷戸径はやゝ登るかな      本井 英

井戸はまだ生かしてありぬ柿青し  児玉和子

 季題は「青柿」、もちろん全く食べられないが、盛んに茂る葉の間にあって、つぶつぶと肥えてゆく様子はなんとなく頼もしい。そんな垣内の一角に古くからの井戸があるのである。近年は水道の普及で普段は使うことはないが、それでも万が一の時のために、何年に一度かは職人を頼んで、ちゃんと「井戸替え」をして、井戸を「生かして」あるのである。井筒にはちゃんと蔽いがしてあって、かつては釣瓶であったものが、今は鉄の柄のポンプになっている。

 いかにも何世代も住まっている邸の片隅の様子が生き生きと描かれている。秋ともなればたわわに実った「柿」を採ろうと、その家の子供や友達たちが竹竿を持って集まる。この場所では、そんなことが何十年も繰り返されているのである。(本井 英)