季題は「夏蝶」。ただ「蝶」とだけ言えば春の季題。それが夏に見られれば「夏の蝶」となり、秋には「秋の蝶」となり、冬には「冬蝶」あるいは「凍蝶」となる。
夏蝶」と言えば、大型でどこか自信に充ちた飛びようが印象的で、例えば〈夏蝶翔るや杉に流れ来て翅一文字 はじめ〉などの作にその特徴がよく捉えられている。
作者はそうした「夏の蝶」の特徴を充分に認識しながら、「夏蝶」のように振る舞いたいと思っているのである。
やや主観的な作であるが、その土台にはじっくりとした「夏の蝶」の写生があるので上滑りにならず、心の底からの願望として読者も納得するのである。(本井 英)