「若水」 原 昌平 選 蓋とれば星を置いたる若井かな 藤永貴之 若水の底に沈める餅ヒかな 僧堂の闇深くして若井汲む 小沢藪柑子 汲み上げし若水空を映したる 梅岡礼子 若水で点てたるお薄正客へ 草野 鞠 若水に息災の顔揃ひける 前田なな
課題句(2019年1月号)
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「若水」 原 昌平 選 蓋とれば星を置いたる若井かな 藤永貴之 若水の底に沈める餅ヒかな 僧堂の闇深くして若井汲む 小沢藪柑子 汲み上げし若水空を映したる 梅岡礼子 若水で点てたるお薄正客へ 草野 鞠 若水に息災の顔揃ひける 前田なな
一句はその行事の詳細を正確に写生した佳句である。「放生会」のクライマックス、神職の手で、バケツや器に入れられていた「泥鰌」が境内の放生池に放たれたのであろう。覆された器から「泥鰌」が池の水面に向かって落ちる瞬間、黒っぽい、細長い「泥鰌」の塊は「絡み合った」状態のままで水面に向かったというのである。
宗教行事であることを通り越して、「生きている」ということの実態が如実に表現された作品と言えよう。(本井 英)
からまつて落ちゆく泥鰌放生会 矢沢六平 蟷螂の猛り続けて転げけり 夕月や蔵の框に猫の皿 鈴虫のながく鳴き止む夜更かな コスモスやダム湖へ続くダンプ道 甘蔗畑の先に不意に崖 小沢藪柑子 日没りてなほもしづれる雪のある 藤永貴之 俳壇の遠くにありて初句会 前北かおる 忘れたる頃にずどんと威銃 井上 基
「マスク」 坂 廣子選 案ずるに及ばずと云ふマスクの眉 青木百舌鳥 マスクとり鼻よりたたみくるくるす 匿名となつたつもりのマスクかな 児玉和子 マスクして目の優しさの滲み出る 辻 梓渕 点滴を点検しをるマスクの目 本井 英 マスクして小さく人を隔てをり 伊藤八千代
季題は「夏蝶」。ただ「蝶」とだけ言えば春の季題。それが夏に見られれば「夏の蝶」となり、秋には「秋の蝶」となり、冬には「冬蝶」あるいは「凍蝶」となる。
夏蝶」と言えば、大型でどこか自信に充ちた飛びようが印象的で、例えば〈夏蝶翔るや杉に流れ来て翅一文字 はじめ〉などの作にその特徴がよく捉えられている。
作者はそうした「夏の蝶」の特徴を充分に認識しながら、「夏蝶」のように振る舞いたいと思っているのである。
やや主観的な作であるが、その土台にはじっくりとした「夏の蝶」の写生があるので上滑りにならず、心の底からの願望として読者も納得するのである。(本井 英)