からまつて落ちゆく泥鰌放生会   矢沢六平

<@p> 季題は「放生会」。陰暦八月十五日、各地の八幡宮などで行われた行事で、捕らえた魚や鳥を放ち供養した。

 一句はその行事の詳細を正確に写生した佳句である。「放生会」のクライマックス、神職の手で、バケツや器に入れられていた「泥鰌」が境内の放生池に放たれたのであろう。覆された器から「泥鰌」が池の水面に向かって落ちる瞬間、黒っぽい、細長い「泥鰌」の塊は「絡み合った」状態のままで水面に向かったというのである。

 宗教行事であることを通り越して、「生きている」ということの実態が如実に表現された作品と言えよう。(本井 英)

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