課題句「立子忌」 小野こゆき 選 立子忌や暮しの中に立子の句 原田淳子 花木の名鳥の名覚え立子の忌 一文字を思ひ巡らす立子の忌 立子忌の巴里に和服の巴里ジヱンヌ 山口照男 立子忌の帰りに寄りて鳩サブレ― 梅岡礼子 はからずも今日立子忌の一句会 宮田公子 父を敬ひ父に愛され立子の忌 冨田いづみ
課題句(2021年3月号)
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課題句「立子忌」 小野こゆき 選 立子忌や暮しの中に立子の句 原田淳子 花木の名鳥の名覚え立子の忌 一文字を思ひ巡らす立子の忌 立子忌の巴里に和服の巴里ジヱンヌ 山口照男 立子忌の帰りに寄りて鳩サブレ― 梅岡礼子 はからずも今日立子忌の一句会 宮田公子 父を敬ひ父に愛され立子の忌 冨田いづみ
季題は「雪しろ」。早春、野山の雪が急に融けて海や河や野に溢れ出ることである。一句の味わい処は「だだ広ごり」。口語で「だだっ広い」などとは言うが「だだ広ごり」と言うかどうか、筆者はその用例を知らない。また「だだ」には「だだ洩れ」などという言い回しもあって、止めどもなく洩れる情況を言い表す。そんなことから初めて耳にする言葉ながら、河口一杯に広ごり湛える「雪しろ」が海へ向かってじりじり移りゆく様が、ありありと目に浮かんだ。
耳慣れない言葉ながら心を揺する何かがあった。さらに、これが「雪しろ」という毎年の現象であることが、災害の危険性を余り感じさせず、どこか落ち着いて見渡すことができる安心感をもって味わう事のできた秘密かも知れない。「季題」の持っている力であろう。(本井 英)
雪しろのだだ広ごりに海へ出づ 藤永貴之 しら梅に萼の紅の滲みたる 芍薬の芽のはじめからまくれなゐ エンジン音あれば耕しをりにけり 銅鐸の如くにビルや夜の椿 前北かおる 寒葵黄泉に通じてをりぬべし 稲垣秀俊 ドリカムを聞きつゝ松の手入れかな 永田泰三 石塀より地に冬蝶の影移る 武居玲子
姫沙羅まじり 本井英
お醬油に潤目鰯の脂浮く 船火事の船首煙の外にあり 船火事の煙浪間をただよへる 火事の火が裏山にとりつきにけり のめり込むやうに潜きてホシハジロ
眠る山の胎へ飛びこみわが車窓 枯れ枯れて姫沙羅まじり沼ほとり 日の当たる丘の暮らしや蒲団干し 草枯に切り幣の散らかれるかな 子等喚声落葉溜りの深ければ
雁木出はづれて河風横なぐり 手の窪に油へ放つまでの牡蠣 わが生に牡蠣船楽しかりし夜も 蒲公英のロゼットはやも落葉中 寒禽のこぼるる仰ぎ渓の径
渓径や笹鳴まじり啄く音 登りつめれば逆光の冬紅葉 鐘低う吊りある紅葉明りかな ワイン色なしたる落葉溜りある 凪空の青へ突きあげ花アロエ
「クロッカス」 前田なな 選 町あげてクロッカス祭にぎやかに 礒貝三枝子 城めぐる広場を埋めしクロッカス クロッカス脚立を買つてきたりけり 前北かおる 地なるもの先づクロッカス噴きにけり 藤永貴之 クロッカス遠く遠くに雪崩音 山口照男 日時計は止まりしまゝにクロッカス 小林一泊