姫沙羅まじり 本井英
お醬油に潤目鰯の脂浮く 船火事の船首煙の外にあり 船火事の煙浪間をただよへる 火事の火が裏山にとりつきにけり のめり込むやうに潜きてホシハジロ
眠る山の胎へ飛びこみわが車窓 枯れ枯れて姫沙羅まじり沼ほとり 日の当たる丘の暮らしや蒲団干し 草枯に切り幣の散らかれるかな 子等喚声落葉溜りの深ければ
雁木出はづれて河風横なぐり 手の窪に油へ放つまでの牡蠣 わが生に牡蠣船楽しかりし夜も 蒲公英のロゼットはやも落葉中 寒禽のこぼるる仰ぎ渓の径
渓径や笹鳴まじり啄く音 登りつめれば逆光の冬紅葉 鐘低う吊りある紅葉明りかな ワイン色なしたる落葉溜りある 凪空の青へ突きあげ花アロエ
主宰近詠(2021年3月号)
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