在宅の仕事納めの静かな日 藤森荘吉 年忘瀬音に近き奥座敷 港町番地で探す冬の景 冬の海巨船ぽつかり現れる 日だまりの石に抱きつき冬の蠅 松島盛夫 グリーンカーテン枯れて小学校の冬 児玉和子 こなごなの落葉にほへる朝の路 冨田いづみ 発掘の予告看板穭田に 杉原祐之
雑詠(2024年4月号)
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在宅の仕事納めの静かな日 藤森荘吉 年忘瀬音に近き奥座敷 港町番地で探す冬の景 冬の海巨船ぽつかり現れる 日だまりの石に抱きつき冬の蠅 松島盛夫 グリーンカーテン枯れて小学校の冬 児玉和子 こなごなの落葉にほへる朝の路 冨田いづみ 発掘の予告看板穭田に 杉原祐之
胴の間に 本井 英 島裏を訪ふは久々日脚伸ぶ 姉妹ふけて母似や桜餅 鎌倉より北鎌倉は春浅く 気動車の黄色焼野にさしかかり ヘルメット配り野焼の人数かな 枯蓮を渫ひひきずり上げてある 浅春の神門に彫る梅と牛 梅の坂宮地芝居のありし世も 会釈してお針子仲間針供養 針供養に連ぬる傘の色いろいろ
蕗の薹ひねり上げては摘みすすめ 着地してはづむ烏や草萌ゆる 胴の間に若布つみあげ戻りくる 紅梅の楉の花のさらに濃き 奏でむと指でなぶりて花馬酔木 犬ふぐり群るるともなく健やかに 恋猫のいつまで留守の猫ちぐら 東風ゆたかなりタラップを下りゆけば 東風の野を舎人ライナー疾走す 満腔に東風ぞ永久気管孔
課題句「燕」 青木百舌鳥 選 埋め立てて海は遠くに初燕 小池みち 埋立地にもドッグにも燕来る つばくろの尾を震はせて餌与ふ 櫻井耕一 とめどなき発車メロディーつばくらめ 前北かおる ニュータウンオールドタウン燕来る 小沢藪柑子 つばくらめ慕ひ寄らねど逃ぐるなく 本井 英
季題は「冬ぬくし」。「冬暖」の傍題である。立冬が過ぎているのに、まだまだ秋の続きのような日和で、風もないような状況である。「キッチンカー」という車両はいつ頃から、こんなに身近に見かけるようになったのであろうか。小型トラックを改造して、少々の煮炊きなら出来るようになっているらしい。東京のオフィス街などでは働いている人の数と食堂の定員のバランスがとれて居ないためか、若いサラリーマン達が「キッチンカー」で温かいランチを買って、近くの公園などで食べるというのも近年よく見かける景色だ。さてこの句では、その「キッチンカー」が「博物館」のフロントスペースに登場しているのである。
比較的ゆったりしたスペースにゆったりと建っていることの多い「博物館」。その一画に駐めた「キッチンカー」の前に二三人のお客が並んでいる。なるほど「冬ぬくし」という気分が伝わってくる。たまたま通りかかった作者の目には納得のいく景として見えたのであろう。平凡な景色の中に、季節のゆったりした推移が見えて来る。(本井 英)