稚魚なんだとか 本井 英
木天蓼や谷をへだてて古代杉 紫陽花は瑕瑾なき葉をうち重ね 日傘なほよろづ小ぶりのよろしけれ 夏燕出会ひがしらに追ひ追はれ 蜑路地の顔の高さをつばくらめ
豊島園をつつきり流れ梅雨の川 駅ごとの発車チャイムや梅雨最中 舟虫の追ひおとされて泳ぐなり 水中に風あるごとし目高散る 寝てか醒めてか五月闇知るばかり
花落ちて山梔子はやも五稜なす 睡蓮の白つまらなく黄のいやし フラワーセンター隅つこの半夏生 老鶯を画眉鳥まぜつかへしたる 吹きおろし来たりてあふれ青嵐
楮の実なりやと問へばさてと答ふ 乾涸らびし蚯蚓を蟻のとがめざる 涼風の恣なり恢復期 四阿の黴の垂木に今日の晴 ブルーギルの稚魚なんだとか涼しげに
主宰近詠(2018年9月号)
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