ドトールまでは 本井 英
雨さらさら龍の玉には及ばざる 龍の玉描くに叶ふ岩絵具 小流れのよろこび走り芹へ跳ね 梅林に入りて消ゆる径かな 梅の枝くぐりて少しよろけたり
その刹那目白の背に梅の影 梅林や送風塔も設へて あちこちでチャイムサイレン梅の午 梅蕾つぶつぶあるを剪定す 剪定や他人の話をうはのそら
剪定やラジオの音をめいつぱい 春川のおなじ早さの出会ひをり 盆梅も金鍔もすき老いたりな 花少ななる盆梅もよろしけれ 春の風邪ドトールまでは出て来たる
水替へて根がうれしさうクロッカス 筑波嶺の青く低しよ梅の風 野梅とて咲き満ちあれば華やかに 日面に長けて川曲の仏の座 朝日より夕日がやさし梅の散る