主宰近詠(2017年5月号)


ドトールまでは     本井 英

雨さらさら龍の玉には及ばざる

龍の玉描くに叶ふ岩絵具

小流れのよろこび走り芹へ跳ね

梅林に入りて消ゆる径かな

梅の枝くぐりて少しよろけたり




その刹那目白の背 に梅の影

梅林や送風塔も設へて

あちこちでチャイムサイレン梅の午

梅蕾つぶつぶあるを剪定す

剪定や他人の話をうはのそら




剪定やラジオの音をめいつぱい

春川のおなじ早さの出会ひをり

盆梅も金鍔もすき老いたりな

花少ななる盆梅もよろしけれ

春の風邪ドトールまでは出て来たる




水替へて根がうれしさうクロッカス

筑波嶺の青く低しよ梅の風

野梅とて咲き満ちあれば華やかに

日面に長けて川曲の仏の座

朝日より夕日がやさし梅の散る