風つよければ 本井英
裄すこし短くネルを快闊に ネルを著て胸ゆたかとは申されず 包めるは河北新報蕗の束 煮方やら土のせゐやら蕗やはらか からび果て藤の落花とからうじて
尖端はすつかり黄色麦の禾 大麦や彼方を過ぐる土埃 つばくらめ風つよければ勁く飛ぶ 辺津宮の甍が嵌まり島若葉 芍薬の蕾に案の如く蟻
薔薇の名となりてより幸薄き生 漁協売店筍を積みて売る 松蟬に声の潮の空に充つ 夏帽を押さへるときの肘真白 幼子をひつかかへたり蜂来しと
涼風に身の透けてゆくおもひかな弓 かるく当てて奏でて牛蛙 その先は木下闇へと径ほそり 立葵まんなかの高さから咲く 浅間まで森がたくさん夏燕
主宰近詠(2015年8月号)
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