主宰近詠(2015年7月号)


ネクタイ締めぬ	本井 英

四月かなネクタイ締めぬ日々ながら

十薬の嫩葉スペードなせりけり

佇めばその香の充ちて楠若葉

身のうちに疼くものあり昭和の日

終点の浜のバス停春の宵



散り惜しみ散り惜しみ花冷ゆるかな

翡翠のくくと噦したりける

湯疲れの視線熊谷草に置き

艦載機の音が劈く大霞

標高をかせぎゆくほど峰桜



苞すでに白藤とこそ知られたれ

一輪草散りてからびて葉の上に

根元からも瘤からも蘖えにけり

人や知る青木の花の散り果てしを

浦島草テンカラ釣りの綸放る



蛇をると女三人連れ立ちて

貝母散り果て全体に黄ばみそめ

大枝垂葉桜となり遂せたる

酔ひ痴れるとは薔薇蘂を蜂が抱き

足早の小諸の春を惜しまばや