ネクタイ締めぬ 本井 英
四月かなネクタイ締めぬ日々ながら 十薬の嫩葉スペードなせりけり 佇めばその香の充ちて楠若葉 身のうちに疼くものあり昭和の日 終点の浜のバス停春の宵
散り惜しみ散り惜しみ花冷ゆるかな 翡翠のくくと噦したりける 湯疲れの視線熊谷草に置き 艦載機の音が劈く大霞 標高をかせぎゆくほど峰桜
苞すでに白藤とこそ知られたれ 一輪草散りてからびて葉の上に 根元からも瘤からも蘖えにけり 人や知る青木の花の散り果てしを 浦島草テンカラ釣りの綸放る
蛇をると女三人連れ立ちて 貝母散り果て全体に黄ばみそめ 大枝垂葉桜となり遂せたる 酔ひ痴れるとは薔薇蘂を蜂が抱き 足早の小諸の春を惜しまばや