主宰近詠(2015年2月号)


行方もなかりけり  本井 英

肌寒の青色発光ダイオード

鯊の顎とらへし赤く小さき鉤

世に古りてさらに時雨忌修すなる

上方はよろづ馴染めず時雨の忌

落葉籠猫を拾つて来たりけり



山の湯へ蒟蒻掘を見つつ過ぐ

蒟蒻を掘るや膝より下は闇

ソフトボールほどの蒟蒻玉掘れる

綿虫の小さく揺れ大きくも揺れ

帰り花窓ちかければ部屋の灯に



帰り花散りて行方もなかりけり

鯉沈む淵もいくつか村の冬

堰越ゆる時に膨らみ冬の水

眠る山の吐息のごとし川細し

猪罠の外にも藷を散らし置き



信濃なる空の深さの木守柿

冬ざるる沢庵の墓一字無し

枯れ蕩け大葉擬宝珠の大葉かな

酉の市の(ナカ)へと足の向きしころ

ていねいに干す河豚の尾や風の無き