主宰近詠(2011年4月)


川涸るる     本井 英

 

初空の大一枚や地球つつむ

その先は波濤ばかりの恵方かな

門灯や今宵歌留多の客迎ふ

人影の途切るるときの寒牡丹

ひそやかに金魚をひさぎ町の冬



本郷にこと古りにける枯木宿

二羽四羽六羽と鴨の増えてくる

サイレンの遠きままなり寒日和

賽の目に切りては雪を卸しけり

切干の笊立てかける角度かな



諍へば声まで訛みて都鳥

雪山へ矢をつがへある神事かな

湘南の空のやはらか敷松葉

侘助のさはに咲けるも海ちかみ

らいてうと刻む碑梅白し



手櫛して探り当てたり龍の玉

一村のしづけさに梅探るかな

ひき返しては探梅のつづくかな

ごろ石に面輪々々や川涸るる

枝ぶりのざわりざわりと野梅かな