皇帝ダリア 本井 英
登り来しご褒美の冬紅葉かな
スケートのやうに爪先落葉蹴る
丘を辿り富士を望めば日短
皇帝ダリアとは頓狂や冬の晴
マクドナルドなんども喰らひ十二月
山茶花の咲きにぎはふに辟易す
コッヘルにつきし熱燗とびつきり
ここまでの手順の日数紙を漉く
ひたひたと闇が呑み込む枯野かな
冬の日のみるみる低し隅田川
法の池に一羽ばかりの浮寝かな
木々枯れてあからさまなる東司かな
人は吾を日向ぼこりと見て過ぐや
都鳥の汝はべつぴん嘴紅き
お積もりの酌をしづかに年忘
年忘新幹線で帰る人も
裸木の欅は欅椋は椋
寒禽に飯桐の実はマナのごと
枯木道ひとりたどれば老ふかむ
日が落ちてすなはち除夜の都会かな