主宰近詠(2014年4月号)


ひたすらひとつ  本井 英

大銀杏無きに馴れたる初御空

年酒酌む九十の義母のいける口

食積へ年めされたる箸のさき

福詣弁天さまはお軸にて

汁粉屋につき合ふことも福詣



湯どころの山ふところの初薬師

祈ぎごとはひたすらひとつ初薬師

富士塚の日裏あたりの氷柱かな

護摩太鼓とほく始まり日向ぼこ

ボロ市に買うて被りて冬帽子



ボロ市や奉公袋手にぞとる

ボロ市を出はづれて肩寒きこと

ボロ市を素見してより梅探る

鎌倉や小路の奥に山眠り

涸れ川を糾ふやうに詣道



寒鯉の鱗一枚づつの紺

梅が下絵馬記入所の椅子机

薄氷の縁のあたりの揺るるかな

薄氷にして細波を拒みをり

落椿岩根はざまをなす処