ひたすらひとつ 本井 英
大銀杏無きに馴れたる初御空 年酒酌む九十の義母のいける口 食積へ年めされたる箸のさき 福詣弁天さまはお軸にて 汁粉屋につき合ふことも福詣
湯どころの山ふところの初薬師 祈ぎごとはひたすらひとつ初薬師 富士塚の日裏あたりの氷柱かな 護摩太鼓とほく始まり日向ぼこ ボロ市に買うて被りて冬帽子
ボロ市や奉公袋手にぞとる ボロ市を出はづれて肩寒きこと ボロ市を素見してより梅探る 鎌倉や小路の奥に山眠り 涸れ川を糾ふやうに詣道
寒鯉の鱗一枚づつの紺 梅が下絵馬記入所の椅子机 薄氷の縁のあたりの揺るるかな 薄氷にして細波を拒みをり 落椿岩根はざまをなす処