語らひの鵜 本井 英
積み上げて鵜篝の薪香るかな 鵜匠宿に編みかけてある鵜籠かな 語らひの鵜とや二羽づつ一籠に 羽色のまだととのはぬ鵜も籠に 鵜匠宿辞してこゝらの夏蕨
青鷺の逃ぐるにあらず遠ざかる 峰入衆今朝出で立ちし村閑か 舟虫とすれ違うたることのなき 思案顔つくりゐる間の団扇かな 炎天や定期便なき滑走路
炎天に第五第六駐車場 炎天へ伸びゆくザイルためらはず 一山の諸仏にけふの溽暑かな 東京はお盆や我等沼にあそび 小為替を待つ逗留や衣紋竹
蟻の道加速減速なかりけり 蓮華かかぐる一茎の小棘かな 百日紅咲くや薬玉割るるやう 露草の紺一点を叢中に 緑蔭のベンチルーペの忘れ物