主宰近詠(2013年10月号)


語らひの鵜  本井 英

積み上げて鵜篝の薪香るかな

鵜匠宿に編みかけてある鵜籠かな

語らひの鵜とや二羽づつ一 籠に

羽色のまだととのはぬ鵜も籠に

鵜匠宿辞してこゝらの夏蕨



青鷺の逃ぐるにあらず遠ざかる

峰入衆今朝出で立ちし村閑か

舟虫とすれ違うたることのなき

思案顔つくりゐる間の団扇かな

炎天や定期便なき滑走路



炎天に第五第六駐車場

炎天へ伸びゆくザイルためらはず

一山の諸仏にけふの溽暑かな

東京はお盆や我等沼にあそび

小為替を待つ逗留や衣紋竹



蟻の道加速減速なかりけり

蓮華かかぐる一茎の小棘かな

百日紅咲くや薬玉割るるやう

露草の紺一点を叢中に

緑蔭のベンチルーペの忘れ物