主宰近詠(2013年8月号)


なるべくなれり   本井 英

メーデーの列を離れる一 家族

ビヤホールの卓にメーデー崩れかな

鐘楼の肩の高さの大手毬

膝に虻浄土庭園見て座せば

亡き妻の母を見舞ひて母の日は



麦の穂や音無く過ぐる熱気球

小魚のやうに日を受け竹落葉

竹の皮もんどりうつて脱げにけり

まくなぎを払ふ身ぶりの彼方かな

雨安居となるべくなれり雲走り



どの枇杷も色得ることを冀ふ

漕ぎ入れんかな浮巣などあるべけれ

雲居にはスカイツリーも沼の夏

舟虫のをらずやをりぬいや小さし

小判草御用提灯掲げたる



立ち寄りてくれし姪つ娘更衣

眦の汗やすつぴん美しき

椎若葉老いの華やぎとはかくや

蟻の道仲良しなどはをらぬらし

下の田へ田植濁りの零れけり