なるべくなれり 本井 英
メーデーの列を離れる一家族 ビヤホールの卓にメーデー崩れかな 鐘楼の肩の高さの大手毬 膝に虻浄土庭園見て座せば 亡き妻の母を見舞ひて母の日は
麦の穂や音無く過ぐる熱気球 小魚のやうに日を受け竹落葉 竹の皮もんどりうつて脱げにけり まくなぎを払ふ身ぶりの彼方かな 雨安居となるべくなれり雲走り
どの枇杷も色得ることを冀ふ 漕ぎ入れんかな浮巣などあるべけれ 雲居にはスカイツリーも沼の夏 舟虫のをらずやをりぬいや小さし 小判草御用提灯掲げたる
立ち寄りてくれし姪つ娘更衣 眦の汗やすつぴん美しき 椎若葉老いの華やぎとはかくや 蟻の道仲良しなどはをらぬらし 下の田へ田植濁りの零れけり