主宰近詠(2013年7月号)


かく降れば  本井 英

小綬鶏のけたたましきも百千鳥

浦島草綸を大きくふりかざし

巣立ち燕ぞぱつちんと轢かれしは

へろへろと蝌蚪の伝令潜りゆく

ボートレース直前ボート後じさり



コックスを投げ込みボートレース了

庭遅日関守石のなんと小さく

店奥のテレビは競馬藤の昼

暗渠口出ては入りてはつばくらめ

搾りたくなるほど雨の八重桜



小流れを二手に岐ける杉菜島

翔るものつばくろばかりかく降れば

開かりて咲きてその名もさはふたぎ

惜春や一駅だけの大師線

ヤキソバに口を汚して春惜しむ



芍薬の蕾こつんと色いまだ

昼すぎてよく泳ぐなり五月鯉

きりこりと村を明るう遠蛙

足跡は長靴葛は玉を巻き

十五六ならび養蜂箱多忙