冬紅葉映して水の伸び縮み 前田なな (2013年4月号)

 季題は「冬紅葉」、傍題に「残る紅葉」がある。近年は地球温暖化の影響か「紅葉」の色づきが全体的に遅いようで、関東・関西などは、むしろ立冬過ぎのほうが紅葉の美しさは際だっているようにも感ぜられる。このあたり「歳時記的」には実は大きな問題を含んでいよう。ともかく、特に東京あたりでは「冬紅葉」こそ愛ずるに足る美しさになることは確かである。その「冬紅葉」を映しているのは池。早くも水鳥がやってきているのか、時折、細波が池面を揺らしている。そのたびに「冬紅葉」の「赤」はギューッと引っ張られたり、ギュッと縮められたり。美しい色模様を見せてくれる。一つの景を、辛抱強く凝視した結果、ご褒美のように賜った一句といえよう。 (本井 英)