こんこんさんも 本井 英
秋風の聞こえはじめてやがて吹く
島径や苗代茱萸はいまが花
稲架解けば長短の竹竿となる
乾きゆく風金鈴子ゆらしては
とある朝蜘蛛が囲を張らなくなりて
高々と皇帝ダリアひとつ色
お風呂沸きましたと風呂が今朝の冬
立冬と妻に告げ猫にも告ぐる
鷹放つ鷹匠補より鷹匠へ
鷹が北向く鷹匠が北を向く
時雨るるや途中にあれば途中村
釣人を置いて沖磯時雨けり
三囲のこんこんさんも時雨けり
浅草にホッピー通り夕時雨
冬木立平成中村座が消えて
練炭のなんと明るき炎吐き
柊のお米のやうな蕾かな
朴落葉竜骨しかと横たはり
蹴散らせば中ほど湿り落葉塚
雨音の奥や寒雷ころげもす