主宰近詠(2013年2月号)


こんこんさんも        本井 英

秋風の聞こえはじめてやがて吹く

島径や苗代茱萸はいまが花

稲架解けば長短の竹竿となる

乾きゆく風金鈴子ゆらしては

とある朝蜘蛛が囲を張らなくなりて

 



高々と皇帝ダリアひとつ色
お風呂沸きましたと風呂が今朝の冬
立冬と妻に告げ猫にも告ぐる
鷹放つ鷹匠補より鷹匠へ
鷹が北向く鷹匠が北を向く

 



時雨るるや途中にあれば途中村

釣人を置いて沖磯時雨けり

三囲のこんこんさんも時雨けり

浅草にホッピー通り夕時雨

冬木立平成中村座が消えて

 



練炭のなんと明るき炎吐き
柊のお米のやうな蕾かな
朴落葉竜骨しかと横たはり
蹴散らせば中ほど湿り落葉塚
雨音の奥や寒雷ころげもす