主宰近詠(2012年11月号)


いましもや          本井英

揚力を楽しんでゐる日傘かな

ペディキュアの赤の蓮つ葉ソーダ水

蝉腹を縮めるときの声高し

いましもや鳴き加はりし法師蝉

沖の帆の白さのもはや秋のもの




捕虫網つひには鳩を追ひまはし

啼きよせてきし蜩に埋もれをり

射かけくる日の箭を蜥蜴弾きやまず

冨士の秀は露の大地を吸い上げて

聞き澄ます遠き蜩ほど高し




別荘の芝の団居の掻き氷

南瓜蔓かな東奔し西走す

秋水をこまごま配り豊の村

大甍が吸ひ込んでゐる鰯雲



城崎・和田山 六句

薬湯を喫し涼しき御境内

日焼子は温泉玉子茹だる待つ

新涼の朝の足湯に人あらず

遠雷に円山川はたゞ平ら

玄武岩好みて敷きて水打ちて

秋草にドクターヘリの降りる円