花鳥諷詠ドリル ‐主宰の句評‐ 第48回 (平成17年11月11日 席題 八手の花・鷲)

初冬の御慶事近き重警備

 これは一つの挨拶の句。あるいは時の句ですね。こういうのがあっていいと思いますね。あんまり写生写生といって、眼前の句を、客観写生だけすればいいんだと言っていると、俳句が痩せてくる。こうした時のご慶事を種草として詠むというのも、挨拶の句の一つのありようだと思います。

髪染めし娘も畏みて爐を開く

 「爐開き」が季題ですね。風炉で座敷の中で動いていた風炉が終わって、爐が開かれて、爐開きになった。「髪染めし娘も」というので、やっと茶髪っぽいということがわかるけれど、髪染めし人といえば、年配の人が髪を染めていることになるので、これはなかなか危険な使い方ですね。

生垣に茶の花の白点々と

 平凡な句のように見えるけれど、リズムがいいですね。そして一つ見えたら、次々見えたというプロセスが、この語順から見えてくると思います。

秋天にランナー街を埋めつくし

 どなたか「ランナー街」とお読みになってたけど、そう読まれる危険がある。 ふつつかとは言いませんけど、若干不注意な部分もあるかもしれません。でも、この句の面白いのは、いかにもシティーマラソン。いかにも健康志向の人たちが寄り集まっているという、ちょっと悲しい気もするんだけれども、そういうことを皮肉を籠めて、面白いと思います。

止まり木をむずと掴みて檻の鷲

 なるほど止まり木は鳥が止まる為にある止まり木が原義で、バーにある止まり木はその次に使ったことばなんだけれど、こう言われてみると、檻の鷲がバーに来たような感じが若干する。ま、そんなことをおいて、「むずと掴みて」というところに猛禽類、しかも猛禽類の王者と言われる鷲の感じが出ていると思います。

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