主宰近詠(2012年8月号)


やがて風        本井英

大つぶの雨の八十八夜かな

神山(コウヤマ)へとゞけと叫び競べ馬

六番は()とをさまりし競べ馬

品書きの細かは読めず川床灯し

手相見の小暗がりある川床もどり




夏場所のはねて明るき橋わたる

神鶏の増ゆるともなき樟若葉

樟若葉にいつまでもある夕日かな

老梅の今年はげみし実ごしらへ

青梅の申し分なきみのりかな




瓜苗に声かけながら植ゑてゆく

崖下の著莪へと下る順路かな

島にあそぶ閏弥生もけふ三十日

そそくさと蛇も困つてゐるらしや

燕子花母着てゐしはこんな紺




熊蜂のいつまでそこに浮かぶつもり

寺町の寺のはざまの黴の路地

咲きみちて目の高さにも樟の花

つぎくと飛魚を蹴り出す舳かな

馬鈴薯の花よと佇てばやがて風

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