主宰近詠(2012年7月号)


雨の重さの        本井英

からたちの咲いて女子寮男子寮

門灯に辞すや枳殻香るなか

石鹸玉無風といへど流れけり

潮干帰りの夕照の高架駅

閘門に松の花粉の黄一線




タクシーの仮眠してをる花の道

花筏光琳水をさかのぼり

雨吸うて雨の重さの八重桜

木苺の花やアイロンかけたくなる

代掻くや今年も同じ峰映し




白河以北一山百文と聞けば

百文の山々笑ふにはいまだ

斑雪嶺は飯豊と聞けばあくがるる

坂下(バンゲ)とは(ハケ)の転とぞ風光る

ここにまた仮設住宅花の冷

覗き込む雛の鏡に映らんと



犬筥の金のてらりと春灯下

尺蠖は尺蠖こげん小さくとも

大桜蘂もあらかたふりはらひ

掲げつつ青木の花ぞ貧しかる

橋あれば橋に佇み春惜しむ