主宰近詠(2012年6月号)


 咲き足して   本井 英

摘草の指を滌げる小滝かな

蝌蚪の国へ幼のこころ行つたまま

蝿生まれ出でて居ずまひ正したり

衿キッと擬宝珠の芽とぞ覚えたる

レジ袋より掴みだす繁縷かな



能古島稽古会 十五句

春潮をへだて都会やドームもある

菜の花にしやがんでをるはかくれんぼ

紫陽花の嫩葉こつてり緑色

漁舟椿の崖の真下にて

西国の夜明けのおそき桜かな




咲き足して夕桜とぞなりにける

雛罌粟に風を残して雨あがる

島隅のいくばくもなき田を打てる

茎立たぬやうに大根の頸刎ねし

路地にもるる老のカラオケ蝶の昼




花の昼仔山羊ほろほろ糞りながら

雛罌粟や莟の蓋をつけたまま

囀と焼玉の音枕辺に

島山の椿の戸にも名残かな

忘れめや僕らの島の花の日々

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