惜しむ心の 本井英
に出入り口無し茶の蕾
冬ざれて薬草園は札ばかり
顎あげて獲物咥えて親狐
眼ふかく閉ぢて満腹狐の仔
とつとつとつとつとつとつとつ狐去る
煤竹の届いてはをり
(
うすき背を屈めては咳こぼすかな
飛行雲ころげくづほれ冬の晴
枯蔓のぽきぽき折るる螺旋かな
宮邸の大冬木立住まふなく
橋なかにマフラー外す日和かな
歩み入り銀杏落葉や面映ゆき
幾本もホースが走り火事の路地
鎌倉や山が眠れば谷戸もまた
枯れてなほ岩煙草とぞ知られける
へとへとに枯れつくしたり擬宝珠の葉
極月の色にくすみて茨の実
真かづら蕩けそうなる赤充たし
皺みたるままに流れて冬の水
この年や惜しむ心のありながら
主宰近詠(2012年3月号)
コメントを残す