六平さんの勇気ある公開の後ろが続かないようで遺憾です。
折角なので、下名は3ヵ年分の落選展を開きたいと思います。
○は雑誌に掲載の選句です。
事柄優先で描写が出来ていない句が目立ちます。
当たり前のことですが、角川「俳句」に応募の残りを投句しているようでは受賞は覚束ないということです。
09年黒潮賞 第1回応募作(8位/35篇中)
一群の去りて一群初雀
○風花の舞ひて昼間の歓楽街
○マフラーの巻きを緩めて麦を踏む
鍬で土掻く音固し春浅し
暮遅し水車ぎゆうと鳴りにけり
カフェの卓並べそめられ紫木蓮
怪獣のやうにミモザの花盛り
雨に濡れ雨に爛れて濃山吹
着流しで万太郎忌の上野にゐ
薄暗き基地外柵の枇杷実る
○夾竹桃人工島に咲き盛る
蜘蛛の囲の張られし非常警報器
余所見してをれどぐんぐん芝を刈る
祭果てあちらこちらの水溜り
苦力(クーリー)に朝霧きたる波止場かな
実石榴にからりと晴れし湖北かな
島の柚子搾れば山の香りあり
ダービー馬らしき恰幅馬肥ゆる
噴水の噴かぬままなる冬日向
日の落ちて黒ずみゐたる冬の池
10年黒潮賞_第2回応募作(19位/24篇中)
離れ住む妻を思はば朧かな
マンションの下見に来れば桜葉に
風光る婚礼式の打合せ
母の日の母となりゆく腹を撫で
○入籍の日の凌霄の一つ咲き
一人目はおなごなるらむ桐の花
腹の子の動き止むとて明易し
結婚を明日に宙舞ふ蛍の火
酔漢のやうなる源氏蛍かな
○汗だくの結婚式の終りたる
娶りたる妻の寝返り明易し
父として夏木のやうになりぬべし
バス停は新居の真下明易し
○風鈴や妻の名をさん付けで呼び
橅の木の蔭涼やかに妻と我
洗濯を一緒に干して夜の秋
妻が背を露はに眠り扇風機
曲肱の楽しみ銀河仰ぎつつ
嬬恋のキャベツに露のしとどなる
西瓜切る産れて来たる子の分も
11年黒潮賞_第3回応募作 (6位/20篇中)
○親となる不安凍星満ちにけり
殊の外産声小さく霜の夜
○産院の妻のもの干す小春かな
出張のめつきり減りぬ神の留守
古暦授乳オムツの記録あり
○嬰児を縦抱きにして御慶かな
嬰(やや)の眼に映つてをりし木の芽かな
嬰の世話をして出勤の虚子忌かな
しやぼん玉大人が吹いてゐたりけり
ベビーカー押せば進むよ風五月
気管支を病む嬰の寝息明易し
○明易や寝返りの子に蹴られたる
蚊帳吊の真中に眠る赤子かな
○午睡の嬰覚めて周りを見渡せる
甚平をはみ出す嬰(やや)の脚太し
ひよめきの閉ぢたる痕の汗疹かな
目を細め冷奴食ぶ赤子かな
利かん気の子供のやうに雷光る
○薮蚊打ちたる掌に赤子の血
冷房の風の道読みバギー置く
〆