季題は「梅」である。春の季題でありながら、つねに「寒さ」と背中合わせの感じが強いし、「探梅」という季題になると、ともかく「咲いているかも知れない梅の花を求めて」寒中の野に立ち出ることになる。「大気の湿り気」は即ち「湿度」。梅の咲く頃の湿度は、地方によってさまざま。となるとこの句、詠まれた地方によって味わい方が少々異なるのかもしれない。例えば日本海側の雪の多い地方の場合。春になって晴天の日々が続いても、どことなく「湿り気の残る大気」の中で、漸く梅も綻び始めた、と言う気分が伝わって来るし、これが東京などのようにこの時期「乾燥」することの多い地方なら、昨日久々に降った「雨」の湿り気が今日も残っておって、という喜ばしい気分に充ちてくる。どのみち着実に進行する早春を讃える、しみじみした佳句となっていよう。(本井 英)
湿り気の残る大気や梅香る 山内裕子
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