主宰近詠(2025年3月号)

稽古会   本井 英

亡き人に待たるる思ひ去年今年

山裾に灯はありながら初明り

沖雲を脱ぎ捨て燦と初日かな

一湾に充ちわたりたる初日影

声失ひ笑顔ばかりの御慶われ

雪雫したたり止まず弓始

句に対す即ち仕事始めかな

思はずも更けまさりをり歌留多の夜

   (夏潮稽古会 名古屋 九句)    
焦げ色となり果て銀杏落葉たり

動く鴨動かざる鴨陣のうち


      (醒ヶ井)
竹林の(コウベ)垂るるも雪景色

梅花藻のなほ咲きをるに六花

      (桑名)
万太郎句碑の細字も春を待つ

釣堀に日脚伸ぶよと居並べる

きゆるきゆると目白来てゐる枇杷の花

     (常滑)
葛枯れて捨て陶の山あからさま

泉囁けば笹鳴和すごとし

寒林に絡みのたうち藤の蔓

水鳥の糞りたる白きもの浮かぶ

プードルのやうに呆けて蒲の絮

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