記念写真も 本井 英 三連符なしたり烏瓜真っ赤 蕎麦搔を雨の無聊に作らんか 日向ぼこ進行中の病ひなく 川風のたゆむ辺りの浮寝かな 屯してをれどてんでんヒドリガモ 花瓶立てしやうに白鷺川の冬 牡蠣船の急階段の手摺かな 牡蠣船の障子が開いて閉じにけり ジーナといふ娘の話ペチカ燃ゆ 藁仕事足の指にも役のある
日帰り湯とて繁盛や年木積む 広尾とはポインセチアの似合ふ町 海桐の実割れて内蔵あからさま 痩せてゆく高麗山あとは眠るばかり 枝の目白仔細は見えず色ばかり 短日の青鷺糞りて無表情 冬日燦出窓の猫がこちら見て 老いてなほ落葉溜りを蹴る楽し 蕪村忌の記念写真もこと古れる