主宰近詠(2023年1月号)

桃吹きぬ    本井 英

曳波のおもはずあふれ荻の岸

切幣の散らかつてゐる秋の暮

泥煙鯊がたてたり流れけり

鰯雲みしりみしりと目のつまり

愛宕社も伊勢社も柿の里の辻

撮り合つて見せ合つてゐる秋日和

更けつのる夜寒の舞台稽古かな

朝食は七時よりとよ小鳥来る

なほ吹かぬ実のありながら桃吹きぬ

棕櫚の実の育ちつつ黄のうすれつつ


ライトアップされて夜寒の天守閣

小鳥来て小鳥去りたり行啓碑

琴の音の止むときのなき菊花展

足元にホースのたうち菊花展

菊花展のテントの奥に何か煮る

こまごまと律義に実り男郎花

歩十歩に振り返りたり男郎花

通草生りをると男の声澄めり

暮の秋人少ななる巫女だまり

暮の秋安曇野ちひろ美術館

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