主宰近詠(2022年12月号)

清サンが好きで   本井 英

岬への径初月を見まくほり

富士薊参道にして登山道

掌の窪に転げ墜ちたる菜蟲かな

コスモスの数輪風をもてあまし

バス停やコスモス坂と命けたる

すでにして浮かび出てをり小望月

月の友竹馬なる筒井筒なる

百日紅根岸へ虚子が通ひし道

清サンが好きであつたと獺祭忌

菓子パンも刺身も好きで獺祭忌          


身ほとりに南岳画巻獺祭忌

とりとめし命大切獺祭忌

萩叢を遠ざけてをる雨襖

村々の蕎麦の遅速やみすずかる

姫川も海近ければ刈田など

熊鈴につぎつぎ抜かれ草紅葉

青鷺は頸のS字をさらに矯め

うすうすと埃の浮かび池の秋

ナラ枯の切株に生ふ菌派手

ふくらはぎぱきぱき曼珠沙華真つ赤

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