につかにかの 本井 英 ぞわぞわと腰で歩みて毛虫たり 明易の合戦尾根をうち仰ぎ 麻酔より覚めゆく五体明易き 山法師を見下ろさんとて登るかな 向き合うて待つ踏切や梅雨の晴 あれは亀これは鼈梅雨晴間 一病をたづさへくぐる茅の輪かな 滑莧はぐり生産緑地たり 羽毛下の径のほとり代田かな 薫風を棒とつつみて吹き流し
玉網小さし蝶を捕らんや蝦を捕らんや 玄室に幾千年の五月闇 流れゆく蚯蚓の総身ほとびたる につかにかの笑顔にかぶせ夏帽子 きちかうの蕾の闇の覗けけり 膝の蠅ちらりちらりと吾を見上げ 肘で葉を押しやりて蓮撮つてをり 蓮の花つぼむ力をなほ存し 無患子落花霰ほどには弾まざる 夏雲のころがりながら消え失せし