草の底 本井 英 青鳩の旋回したり潮干岩 磯遊のお襁褓ほとびて垂るるかな 赤といふ色のかげろひ先帝祭 一望の卯浪お座敷列車より 橋薄暑脱ぎたるものを腰に巻き
深閑とグループホーム立葵 仰ぎつつ雲のまぶしき花楝 栴檀の花のほとりの登城道 遠ざかるほどに華やぎ花楝 宮若葉と背中合はせに寺若葉
剝ける葉の破けてしまひ柏餅 竹落葉に追ひぬかれたる竹落葉 また一つ繰り出して来し竹落葉 かなへびの背中葉蔭が揺れてゐる かなへびのぽろりと堕ちし草の底 句碑にまじり墓碑も幾つか庵の梅雨
湖北四句 井戸曲輪水櫓とて風薫る 河骨の黄をとらへたり双眼鏡 余呉駅が遠くに見ゆる牛蛙 霧雨ややさしき色に麦熟れて