大蛇行 本井 英
夏草を鎧ひひとやま残土とよ 梅雨空に年余回らぬ観覧車 小鷺可愛や黄の足袋も涼しげに けやけき名競ひ鬼百合熊蜂 梅雨が明けましたと紙垂も揺れはづみ
天空の畑とこそ呼べ蕎麦の花 吹きあげてきて花蕎麦にあそぶ風 咲かんずるあやめの槍の紺の濃き ほたる往来漆黒に樹のかたち 蛍火の急降下とてありにけり
峠越えて男三人瀧を見に 瀧水の解き放たれて微塵なす 瀧筋やはみだしものも諸共に 瀧筋のきゆつとくびれるあたりかな 瀧壺の瀧水癒えてゆくごとし
沸きて澄み沸きて澄みては岩魚沢 枝沢を降りくる人や岩魚川 夏草をむしり喰ふ音牛若し 蜥蜴捉へんとくちなは大蛇行 四万の湯は師もこのまれし夜の秋
主宰近詠(2021年10月号)
コメントを残す