海沿ひの海抜表示浜大根   飯田美恵子

 季題は「浜大根」。「大根」は冬の季題だが、「浜大根」については「冬」とすべきかどうか、疑問の残るところであるが、全く食しないというわけではない(ひどく辛いが、そこが体に良いという人もいる)ので、一応「冬」としておこう。一句の中心は「海抜表示」。およそ二メートルほどの標柱で、その地点の「海抜」が表示してある。昔からあったのかも知れないが、筆者が「気にして確認」をするようになったのは、あの東日本大震災以後である。それまで頭の中で勝手に想像していた「津波」をありありと実感してからというもの、我々日本人はトラウマのように「津波」を怖れるようになった。さらに「南海トラフ」での地震が、現実味を帯びて語られるようになると、真っ平らに「凪いでいる」海を見ても、心のどこかで「津波」を空想している。またこの「海抜表示」が町中にあるのであれば、それほどの恐怖心は持たないのかも知れないが、「海沿ひ」に、「一メートル」とか「二メートル」とか記して立っていたりすると、その「恐怖心」は例えようもない。

 作者は何気ない「海沿ひ」の景を写生なさっただけかもしれないが、読み手によっては大きく心を揺さぶられる人もあったであろう。俳句は時代時代によって、そして読み手によって、さまざまに味わわれるものであることが、この句で良く分かる。(本井 英)

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