淡からずや 本井 英
日がもどりくれば沸きたち河鹿どち 豆隠すやうに皀莢若葉かな いつ轢かれたる蝙蝠ぞからびはて 氷室へと浅間の風のよぢれこみ 駐車場に月見草咲くオーベルジュ
溶 岩組んでなせし門柱月見草 朝顔市ぬけてじりじり日が昇る 菖蒲田に衰ひのうちひろごれる 十薬の腰の高さに迫るほど 植田はや取るほどもなき小草生ひ
老鶯の連ね科白の果てもなや 楮 の実淡からずやとうち眺め 射干のその明るさも雨後のもの つぼむ術忘れて蓮の花弁白 薔薇園にグラジオラスのまぎれ咲き
心おちつく薔薇の黄の淡ければ きちかうの開きて白を濃うしたり 溶岩原 を吞み込んでゆく茂かなここに我等虎の供養を虎ケ雨 木下闇放水銃も設へし大磯鴫立庵 虎供養
主宰近詠(2021年9月号)
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