指垂るる 本井 英
ハーフマイル・ビーチと呼ばれ桜貝 足裏に砂こそばゆき桜貝 散骨は切なる願ひ桜貝 桜貝フラを習つてみやうかしら 桜貝祖父祖母の待つ日影茶屋
虚子の忌の市ヶ谷あたり朝の風 採血の針ちくとあり惜春忌 うすべりを剝がせば板子桜蘂 垢離堂の格子ごしなる春の闇 惜春の丘辺に甘藷先生碑
胸突きの行人坂を風光る おもむろに起きる細浮子沼ぬるむ 長閑けしや浮子の沈むをただ待ちて 風車小屋模してチューリップも楽し 青鷺の踵揚ぐれば指垂るる
前触れもなく仔猫ゐし帰宅かな 仔猫なほおぼつかなさの後ろ脚 妻をはや母と心得仔猫かな 谷せまくなれば鶯さらに近し 万華鏡なしてうかびて菱浮葉
主宰近詠(2021年7月)
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