季題は「冬ざれ」。淋しげな冬景色である。田畑ではない冬の「荒地」を防砂林などを横目に辿って歩いて行くというと、いつの間にか荒々しい浜辺に出ていたというのである。湘南の海などを頭に描いていると、なかなか想像しがたい景であるが、地方へ行けばありふれた景色である。
「荒浜」にあるものは何年もの間に漂着した「汐木」やら、舟の部品やら、ペットボトルやら。その奥に広がる海原には冬浪が弾けて、風に飛沫が飛ばされている。しかしこの「荒浜」も春になれば、ほっとするような「季題」に満たされることにもなるのであろう。 (本井 英)