蜂追ひの紙縒りキラキラ秋日和 矢沢六平

 「蜂追ひ」は主に信州で行われている猟。クロスズメバチ(ジバチともスガルとも呼ぶ)の巣を掘り出して、中の幼虫などを食べ物として収穫する。「猟」の方法は、初めにイカなどの動物蛋白で蜂を誘き寄せ、その一匹に「白い紙縒」の付いた餌を抱かせ、その餌を巣に運ばせる。巣に向かって飛び始めた「蜂(目印の紙縒)」を数名の男達が追いかけ、「蜂の巣」を突き止め、後は煙で蜂たちを気絶させ、その隙に「蜂の巣」を掘り出してしまう。そんな「蜂追ひ」の実際を一句にしたものだが、中七の「紙縒りキラキラ」に林間の木漏れ日の中を飛んでいく蜂の様子が遺憾なく描写されていて面白かった。「いくたて」を説明せずに、印象的な一場面だけで表現したところに力強さまで感じられた。東京を遠く離れて信州に棲まっている作者ならではの一句と言えようか。(本井 英)

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