主宰近詠(2021年2月)

辿ればやがて 本井 英

枯れてなほ屯を解かず紫菀らは

枯るるとは乾きゆくこと紫菀叢

葉も茎も花びらも枯紫菀かな

葉はなえて茎にまとはり枯紫菀

いづこともなく紫や枯紫菀



枯紫菀空仰ぐこと疾うにやめ

来る風をいとふのみなる枯紫菀

枯紫菀に頰をよせたり語らまく

枯紫菀焚いてくれよと身じろげる

枯紫菀へ介錯の庭鋏かな



  俳誌「稲」へ
稔る色たがへながらも稲筵

野尻湖のさびしき頃の一茶の忌

椋鳥(ムク)々々と蔑まれつつ一茶の忌

老といふ敵手強(テゴワ)しよ一茶の忌

人の世の醜きことも一茶の忌



落葉かさなしてゆゆしき土塁かな

今日の雨に草枯さらにはらばへる

嵐電に場末とてあり夕時雨

時雨つつ妓楼の名残かすかにも

時雨つつ辿ればやがて美濃ざかひ
◯特殊標記 (1)ルビ 滴りや 山の心斯く (2)詞書      

博多二句

(3)添字      干し上げて若布本 ありにけり  or       一谷戸の奥の奥まで菖蒲園 (4)長音等記号      〳〵 〴〵 〱 〲

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