阿鼻叫喚を 本井 英
海紅豆阿鼻叫喚を吾知らず 蟬声のカタカタ・カタと止まりけり 葛の花高きはさらに風ゆたか 芋虫は嘶くやうに身を反らし 芋虫の疣足もんぺばきにして
たぐり寄すれば菱の実もこぞり来る 峰近み水仕の水も澄みわたり 箸茶碗漬けつぱなしに水澄める 作庭とて愉しからんや水の秋 新しき庭の明るさ白式部
佳き風に小つぶ小つぶや新松子 衛兵のやうにゐならび蘇鉄咲く 灸花莟ながらに幾つづれ 松手入済みしばかりを風通ふ 浜へ出る小さきトンネル昼の虫
分岐して茎たくましや滑莧 ひるがへるちぬと目が遭ひ河澄める 浮かび出て鯉の口の輪秋の水 雨ながら水の秋なるお庭かな 榠樝の実小さくこまつしやくれたる
主宰近詠(2020年12月号)
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