主宰近詠(2020年11月号)

湖の秋     本井英

仙人掌のやうに()てるも雲の峰

枝移るときの羽色油蟬

川蜻蛉かなもつれてはいこひては

なつかしの蚊帳吊草の茎の(カド) 

花茄子のたいらの花の下向きに



にがうりと呼びて黄色く熟れさせて

枝豆を畦に面白半分に

根の生えしごとく夏山揺るがざる

夏川の痩せて浅きやもくづがに

その(ヒト)の座したれば佳き緑蔭に



雪渓のひとかけこびりつく富岳

茶畑へ大水撒きをしてをりぬ

単線や臭木の丘にさしかかり

稲田道三方原をひた目ざし

サイクリングロードを歩く湖の秋



湖浪のたためる音と鉦叩と

素麺流しの割竹の乾きをり

立ち止まるたび秋風に抱かるる

一輛車あらは夏川渡るとき

半周を車窓に座しぬ湖の秋
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