利根川の夜明けを告げて行々子  北村武子

 季題は「行々子」、「葭切」である。南方から渡来する夏鳥で、「ギョギョ、ギョギョ」と大声で叫き立てながら、水辺を移動してまわる。「利根川」は坂東太郎の異名を持つ関東の大河。滔々たる流れのあちこちに、豊かに広がる芦原を従えている。早朝、その一角で「行々子」が囀りを始め、そんな頃、東の空は明るみ始め、「利根川」の今日が始まろうとしているのである。

 一句は「明易」の河辺の景を描いて気持ちの良い句であるが、それは作者の心の張りが、緊密な措辞と朗々たる声調となって詠われているからである。(本井 英)

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