ぼうたんの散るごとに身を軽うする   田中 香

 季題は「ぼうたん」、「牡丹」(夏)である。中国で「牡丹」は「花の王」、「獣の王」である「獅子」と好一対をなし「牡丹に唐獅子」というコンビを組んでいる。舞踊の「石橋」のような獅子の働く舞台には必ず「牡丹」が副えられるのはそのせいである。

 幾重にも花弁を畳み込んで咲き始めた「牡丹」。その「牡丹」の花弁も徐々に緩み始め、ついにはハラリ、ハラリと花弁を脱ぐ。その様子を作者は「身を軽くする」と見てとった。一枚一枚散り墜ちて行く花弁を、只々惜しむのではなく、「身を軽くする」と、肯定的に表現したのである。勿論「肯定」と言ってもさばさばとした諦観に通じるもので、その辺りに「生きる」ということの本質を垣間見させてくれる。「軽う」のウ音便も全体の柔らかい表現に叶っている。 (本井 英)

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