主宰近詠(2020年7月)

みどりの日    本井 英

双蝶にして競ふなる睦むなる

翡翠の行衛まだ見ゆなほ見ゆる

村道に理髪店あり海芋咲く

村道が尽きてそま道落椿

つんつんと紫蘭のつぼみ槍なせる



花芽はやこしらへてある立葵

桑の実のとげとげしさや色いまだ

紫菀萌ゆはらりと驢馬の耳のごと

飴のやうに歪みたる葉やチューリップ

夢の尾のほそり失せゆく朝寝かな



逝く春の絵画館とは窓すくな

そよぎつつひとつばたごの花盛り

スケボーの音のひねもす春惜しむ

入り乱れたる白花や二輪草

鈴蘭の一茎ばかり今年また



へろへろと紫菀若葉や尺余なる

惜しむべき春としもなく過ぎゆくよ

叶はざることのみ多き春は逝く

鉄線の花の切つ先しわみそめ

海ありて松ヶ枝ありてみどりの日

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