季題は「涅槃図」。旧暦二月十五日は釈尊が入滅した日。各寺院では「涅槃図」を掲げ「涅槃会」を営む。「涅槃図」の多くはその中央に釈尊入滅の姿を描き、それを取り囲んで羅漢達が嘆き、さらに禽獣が悲しむ図となっている。
その「涅槃図」を校内に掲げているということは、宗教的な色彩の強い学校で、教育方針の根幹に「仏の道」を据え、日々心の涵養を説く活動を実践しているものと思われる。あるいは理事者・教職員の中に僧形の方々が立ち混じっておられるのかも知れない。
そんな学園の中心的な場所に、今年も「涅槃図」が掲げられる時期がやってきて、寒さの極みということも手伝って、そのあたり一帯が「清閑」としているというのである。
学校というと若い人が集っている状況から活発な喚声を連想しがちだが、こうした静けさを思うと不思議な安らぎを感ずる。これも「涅槃」という季題の側面なのであろう。(本井 英)