綾をほどきて 本井英
綾なして綾をほどきて芹の水 空映すところもありて芹の水 野の風にすこし味濃き稲荷寿司 梅林はいますつぽりとビルの陰 梅林やわが影法を連れ歩き
降りかかる雨粒若し梅は老い 紅梅の花弁貼りつく雨の幹 海苔採りの舟よと沖を指させる クルーザーの機走のひびき湾の春 あやにくに雨の御堂や針供養
溶岩垣ののぞきはじめし雪間かな 犬来てはかならず嗅ぎて雪間草 西行を慕ふは誰も三千風忌 唱へみて心地よき音クロッカス 菜の花の黄に分け入りて眼を細う
仏の座菜の花畑の縁に咲く 白椿日陰の風も心地よく 手びさしの右手が疲れあたたかし 二月の菖蒲田乾ききつたりな 梅 香に駐めてユンボの昼休み
主宰近詠(2020年5月号)
1件のフィードバック