埋火を探る冷たき火箸かな  山内裕子

 季題は「埋火」。炉や火鉢の灰の中に埋めた炭火のこと。夜、寝るときに「埋火」にして置き、翌朝、灰の中から搔き出して新しい炭を添えてやることで、炭火は継続される。

 一句はその「朝」の様子。前の晩に「埋火」として灰の中に埋めておいた「火だね」を探っているのである。一晩の間に座敷の温度は随分と下がってしまい、指にとる「火箸」はすっかり冷たくなっている。

 表現の方法としては「埋火を探る火箸の冷たけれ」という方が狙いがはっきり見えるが、それでは「あからさま」過ぎて、掲出句の句形の方が上品な感じもする。(本井 英)

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