主宰近詠(2019年4月号)

人工ビーチ  本井 英

食積や駅伝テレビ点けつぱなし

佳人かな破魔矢の鈴のかそけさに

駅舎から手洗所まで雪を踏む

二両分のホームの雪を踏んでおく

元勲の墨痕淋漓避寒宿



本邸に寄らず避寒の地へもどる

ジオラマのやうな漁港や避寒の地

枝影の地にやはらかや日脚伸ぶ

別れた者同士で暮らし日脚伸ぶ

日はうすうす風の無き日の都鳥



デイゴ枯れ〳〵て人工ビーチかな

大鷭と鴨と仲良くするでもなく

イケメンを自認してをる尾長鴨

運河いま寒の底なる褐色(カチンイロ)

水仙にブロック塀も古びたる



霜どけに靴底のうち重なれる

初場所の華やぎテレビ場面にも

園枯れて沼のかたちのあからさま

靴先でさぐりて蕗の薹もがな

少しおだまり日だまりの寒牡丹

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